研究概要 |
流下液膜に発生する表面波が熱および物質伝達を促進することは良く知られているが,本研究では実験的に最適なじょう乱波が存在することを明らかにした.しかし,広い条件で熱および物質伝達を促進する最適な表面波の条件については十分に明らかにはされていない. 表面波の発達は次のように三つのタイプに分類できることを示した. 1.低周波数では微小じょう乱波は急速に発達し,表面張力波をその前方に伴う涙滴状の大波に発達する. 2.中間的な周波数では,最初に正弦波的形状の波に発達するが,下流に行くと遷移し,大波の間に一つの表面張力波を挟んだ形状の波に発達する. 3.高周波数のじょう乱は正弦波的な波に発達する. 熱および物質輸送が同時に発生するLiBr水溶液の波状流下液膜による水蒸気吸収の数値計算を行った.定量的に十分信頼できる計算結果を得るためには,計算手法をさらに改善する必要はあるが,以下に示す重要な特性が明らかにされた. 1.大波の中に発生した循環流は,大波の前方で気液界面近傍の低濃度溶液を液膜内に巻き込むとともに,後方で高濃度溶液を気液界面に供給する. 2.温度場と濃度場は,大波と大波の問の薄い液膜の存在によって大きく変動する. 3.吸収速度は表面張力波の領域で非常に大きく,液膜厚さと流れの乱れによって大きく変動する. 4.大波の前縁から山頂部までの領域では,吸収量は非常に小さい. 5.大波が相互作用して形状が変動する場合には,大波中の循環流は崩壊と再形成を繰り返し,濃度場は複雑に変化する.
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