研究概要 |
界面活性剤添加による吸収冷凍機吸収器の性能向上の要因解明と,それを最大限活用可能な吸収器形状の探索を目的に,臭化リチウム水溶液の静止薄液膜ならびに流下液膜を対象として,複数の界面活性剤を用いた吸収実験ならびに吸収シミュレーションを行い,界面活性剤添加により臭化リチウム水溶液中に生じるマランゴニ対流のモデル化と,吸収促進効果の定量的評価を試みた.まず,界面活性剤としてn-オクタノール,2エチルヘキサノール,ならびに分子量の近いブタンを添加した臭化リチウム水溶液の静止薄液膜を対象に,吸収開始直後の数百ミリ秒間における表面流動の可視化観察と溶液表面温度の非定常計測を行った.その結果,いずれの界面活性剤を添加した場合にも,界面活性剤の添加により溶液表面においてマランゴニ対流が生じること,また,界面活性剤の種類により,その発生・成長パターンが異なることを明らかにした.そして,本研究の添加濃度範囲では,n-オクタノールを用いた場合に,マランゴニ対流による界面かく乱が最も激しくなることを明らかにした.さらに,この観察結果を基に表面流動速度を推定し,表面流動発生の駆動機構について,モデル化を進めた.そして,以上の結果に基づき,界面活性剤添加による吸収促進効果の定量化を行うために,静止液膜実験結果を基に,マランゴニ対流による界面攪乱効果を考慮した疑似拡散係数を実験的に求めた.この疑似拡散係数を用いて,現在開発中のプレート型流下液膜式吸収器を対象とした吸収シミュレーションを行い,プレート型吸収器における界面活性剤添加効果の推定を行った.その結果,界面活性剤の添加により,最大で,冷凍能力が50%ほど,熱通過率が100%ほど向上する予測を得た.現在,界面活性剤添加にマッチした吸収器形状について実験と理論の両面より検討を進めている.
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