未利用バイオマス資源ならびに廃棄物中の有機分をメタノールに変換し運輸用燃料の基材などとして利用することは化石燃料の消費削減に有効であり、ひいては地球温暖化抑制にも資する。本研究では、それを可能にすることを目指して、バイオマス資源を原料とする小規模熱化学的メタノール変換システムを構築するための基礎研究を行なった。初年度はバイオマスの熱分解を行なわせ、水素と一酸化炭素の混合気を発生させるシステムについて化学平衡論的に検討を行なうとともに、触媒を封じた小型流動反応管に高圧の模擬ガスを流し、得られる生成物をガスクロマトグラフ装置などで分析し、メタノール合成の速度論的解析を試みた。本年度は、引続いて小型流動反応管を用いてメタノール合成の動力学的解析を行なうとともに、合成ガスからのメタノール合成を往復式内燃機関の原理でメタノール化反応の可能性を見極め、さらに得られた知見にもとづいてメタノール変換システムを概念設計した。今年度の結果を要約すれば次のようである。 メタノール合成の動力学的解析の一環として、広く用いられているCu-Zn系の触媒を用い、反応管内の温度、圧力、原料気体と触媒の接触時間などの最適条件を定めた。その結果、触媒層の温度を変えると250℃のときメタノールの収率が極大になることと圧力を高めるほど収率が高まることが示された。その結果、触媒内の滞留時間などの条件を整えればメタノールの収率を70%まで高められることが分かった。 メタノール製造を往復式エンジンに近い構成で行なう方法について検討した結果、気体の圧縮と膨張とを分離して行って圧縮機から吐出する気体を触媒層に導き、触媒層では必要な時間だけ原料気体が滞留できるようにし、メタノールを含む気体を膨張機に導いて除圧と冷却を行なわせ発熱は仕事に変換する小形の合成システム方式を考案した。この原理にもとづくメタノール製造装置によってメタノール合成の可能性を示した。
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