(1)切除した様々な生体組織の測定が可能となる装置の製作を行った。これまでの擬似生体の装置では上方が超音波発振子と受信子の移動装置のため塞がっていて試験体を手軽に交換することができなかった。新装置製作のための、超音波発振子と受信子をX方向、Y方向および回転方向に走査するためのX軸、Y軸パルスステージと回転パルスステージは現有の装置を利用した。新装置の構造を、抵抗線CT法によるガスの二次元温度分布の測定に利用し、その機能を確認した後、本装置の製作を行った。 (2)これまで超音波パルスの発振はパルスジェネレータを用いて、発振周波数10MHz、最大電圧100Vで行ってきたが、この強さのパルスでは寒天で作った擬似生体を透過することはできても、実際の生体を透過することはできない。透過するためにはパルスを増幅しなければならないが、そのような電力増幅器は見当たらなかった。そこでパソコンのボード上で構成されている600Vまでの電圧が可能な超音波発振装置を購入した。同時に装置の構造に合った5MHzの超音波発振子と受信子を購入した。 (3)これまでの測定は、測定終了後に再構成の計算を行うオフラインシステムであった。それを今年度は実際の臨床の場に応用できるように、計測時間、計算時間はもっと短く、計測終了と同時に再構成画像が表れるオンライン計測システムの構築を行った。 (4)生体の組織は不均一である。水分含有率の高い血液、筋肉や各種臓器などの組織の不均一性は加熱時の音速から、非加熱時の音速を引くことによって消去され、温度変化のみが現れる。しかし骨やガスなどのように水分含有率の小さな組織の場合は、超音波は透過せず、その部分の投影データは欠落する。そこで、それらを透過する通常の周波数より極端に低い周波数の音波を用いても解像度の高い映像が得られる超音波逆散乱CTの可能性について調査を行った。
|