(1)初年度、切除した様々な生体組織の測定ができる装置の製作を行ない、昨年度はその装置を用いて牛もも肉、鶏砂肝中の音速の温度による変化を測定した。今年度は引き続き、水中と擬似生体である寒天および生体としてマグロを用いて、まずそれらの音速の温度による変化を測定した。生体の場合は、生体を直接水槽中におくのではなく、厚さ0.01mmのポリ袋中に入れてつるして行った。40℃以上になると生体はたんぱく質が変性するため音速に不連続点を生じた。同じ温度では音速は水、寒天、鶏砂肝、牛もも肉、マグロの順に大きくなる。 (2)次にマグロを用いてCTによる温度分布計測の実験を行った。擬似生体の場合と同じようにマグロの下部に埋め込んだシースヒータをわずかに加熱して実験を行った。加熱後の音速分布から加熱前の音速分布を引いて温度分布再構成画像を求めたが、擬似生体の場合に得られたような鮮明な温度分布像を得ることはできなかった。 (3)そこで、ヒータ周りのマグロをくりぬいて水をいれて実験したところ、10℃以上の温度差がないとマグロの場合は温度分布が計測できないことがわかった。これは水とマグロの音速差が大きいため、わずかな音速差は相対的に感知できない。感度よく温度分布を検知するためには測定する生体と音速差が小さい液体を用いることが必要であることがわかった。 (4)LabViewを用いて、CTの計測と同時に再構成の計算を行い、逐次に再構成画像が表れるオンラインシステムの構築を完成させた。計測に3分ほどかかるため、これをもっと短くすることを試みたが、計測制御に使用しているGPIBの転送速度の限界から無理であることがわかった。
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