研究概要 |
実験的同定の難問の一つに,構造系の境界条件あるいは結合条件の実験的同定がある.現在,構造設計に広く用いられている有限要素法などの数値解析法が,特に動的問題において精度が得られない原因として,境界条件の正確な指定が困難であることが挙げられる.このように,境界条件・結合条件の実験的同定の問題は,設計手法を生かすための最後の関門であり,企業の設計現場で大きな関心が持たれている. この研究では,構造系の境界条件・結合条件に対して,任意の構造系に適用できる汎用的な同定法の開発に取り組んだ.平成14年度では,時刻歴データを直接用いて境界条件を同定する手法について検討した.時刻歴データを直接用いることにより,昨年度提案した方法に比較して,加える外力や測定する応答に対する制約の大幅な緩和をはかることができる.ここでは基礎的な検討を目的として,はりを対象としてとりあげた.対象としたはりは一様とは限定せず,一般的な形状のものにも適用可能な方法となるようにした.同定法の基本的な考え方は,時刻歴データを適当な内挿関数で近似し,変位,速度,加速度のデータを数値微分あるいは数値積分により求められるようにし,これらのデータに基づいて境界部の応答の推定を行い,推定した応答から境界部のパラメータを定めるものである.数値シミュレーションにより提案した同定法の有効性を確かめた.
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