研究概要 |
本年度の研究実績は次の通りである. (1)非対称復元力のうち線形の復元力を有する歯車の円周方向振動方程式の解を求めるためにすでに開発したベクトルを用いた区分線形系に対する境界移行時間法および境界通過時刻法がある.この方法をヒステリシスなトルクを有するカップリングのねじり振動系である区分線形系に適用できるようにした.さらに,区間解析を区分線形系の境界通過時刻法に適用し,解に近い初期値を用いることによって解を求めることが可能となった.現在,広い範囲の初期値を用いても解が求められるような方法を開発している. (2)非線形の復元力を有する二つの回転円板の接触振動については,得られる非線形微分方程式を解析的に解く最適な方法として,独自に開発しつつあるルジャンドル関数を用いた平均法を適用して不安定不動点を求めることができるようになった.今後,この解析結果から,カオス発生に密接な関係がある不安定鞍状点が生じる要因を探る. (3)さらに,不変曲線の計算によって,カオス発生に不可欠なホモクリニック点,ヘテロクリニック点の存在の有無を数値的に自動的に求める方法を開発した.また,この方法を用いて周期振動からカオス現象に至る移行過程も究明しつつある. (4)実験については,二つの回転円板の接触振動については,一定の表面あらさをもつ円板としてモジュールの小さい歯形を切った円板と表面あらさがほとんどない円板を接触させながら回転させたときの振動測定を行った.その結果,カオス現象が生じている可能性があることがわかった.しかし,その測定結果には測定誤差が含まれている.誤差を含んだ測定データからカオスと密接な関係にある不変集合をトポロジカルな方法によって見いだす方法を開発しつつある.
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