本年度の研究では、昨年度に完成させた小型のツイストローラ摩擦駆動装置を組み込んだ位置決め機構を使用して、位置決め分解能の限界を探った。昨年度の研究で最小50pmのステップ幅での位置決めに成功しているので、このレベルの位置決め分解能が再現性良く、安定して得られるようにすることが本年度の課題である。ツイストローラ摩擦駆動装置の駆動には圧電素子と"てこ機構"を用いた微動装置を用いた。この微動機構により10万分の一回転〜1000万分の一の角度分解能で駆動軸を回転させることができる。その結果、ツイストローラ摩擦駆動装置のリードは0.4mm程度であることより、位置決め機構の位置決め分解能は計算上、4nm〜40pmとなる。 このことを確かめるために、テーブル変位を光ファイバ変位センサにより検出し、圧電素子への印加電圧を修正するフィードバック制御システムを構築した。コントローラにはパソコンを用い、PI制御アルゴリズムをC言語により作成した。変位センサの出力をパソコンに取り込むAD変換器は16ビットで、LSB(最小ビット)は約75pmに相当し、これが入力側の変位分解能となる。一方、圧電素子への印加電圧の出力に用いられたDA変換器も16ビットで、こちらのLSBは約2pmとなる。したがって、出力側には余裕があるものの、入力側分解能は目標とする位置決め分解能(50pm)に比べて大きくなっており、目標レベルでの制御ができないことになる。そこで、PWM(パルス幅変調)方式を採用し、入力側の変位分解能を下回る分解能での制御を可能とした。このような処理を行った上でのこのシステムのサィクルタィムは実測により約30μsであった。 そこでこのフィードバック制御システムを用いて1nm、0.5nm、100pm、50pmなどのステップ幅での位置決め実験を繰り返した。その結果、センサのノイズや環境からの外乱をローパスフィルタで除くことで、最小50pmのステップ幅での位置決めを再現性良く達成することができた。今後はこの研究成果を踏まえ、テーブルの移動範囲を広げて位置決め性能を評価することで、ピコメートルレベルの「超精密位置決め技術」の確立を計る。
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