本年度は、まず本システムに適した形の柔軟宇宙ロボット用運動方程式の導出を行った。運動方程式には様々な種類があるが、各関節の速度・加速度等をまず求め、次に力やトルクを求めるrecursiveタイプと、関節ごとに独立に求めるnon-recursiveタイプに分けることができる。本課題では、複数台のパソコンによる並列処理が必要なため、n自由度のロボットに対して、計算量がオーダーnのnon-recursiveタイプLagrange運動方程式の作成を行った。地球を周回するスペース・プラットフォーム上で移動可能な多リンク柔軟マニピュレータのモデルを想定し、座標系と一般化座標を設定し、各エネルギーを計算して、Lagrangeの運動方程式を導出した。この運動方程式の妥当性を調べるため、新たに考案した、冗長自由度を持つ宇宙用柔軟マニピュレータのための軌道追従制御法を使って、マニピュレータの動特性を調べた。その結果、従来の剛体アーム用の制御法では、リンク振動が生じて正確な軌道追従ができないこと、一方提案した制御法では振動抑制制御により正確な追従制御ができることなど、運動方程式の妥当性を確認した。また、この方程式はnon-recursiveタイプであり、並列処理に最適な方程式であることも確認した。次に、ここで開発しようとしているシステムは、各パソコン間のLANによる計算値データの通信が必要であるため、その方法としてソケット通信を利用することを考えた。ここで採用するOSはLinuxであるため、Linux環境下でのソケット通信の可能性を調べてみた。その結果、Linux環境下でもソケット通信は可能であることが確認できたため、各パソコンで解いた運動方程式の計算データをお互いにやりとりするシステムを構築するための準備ができた。
|