研究概要 |
超音波モータの電気等価回路を同定することは,自在にモータを制御する上で極めて重要である.圧電素子単体の等価回路については既に十分な研究がされているが,複雑な形状を有する金属振動体やロータを含むモータ全体に対しては等価回路のパラメータや運動方程式が解明されていない.当研究においては既に,この為の大事な前提条件である正確な共振点駆動を,電圧-電流の位相差制御方式により実現している.本年度は次のステップとして,共振点における定電流駆動回路を追加しモータの挙動を実測した.その結果先ず定電流下で振動子先端の振幅=振動速度が常に一定に保たれること,及び電流値の大小に正確に振幅が比例することが確認できた.これによりこれまで未確認であった電流と振動子先端速度が1:1に対応することを始めて実証できた.次にこの条件下において,機械的なトルク負荷を加えてモータ静特性を測った結果,負荷の大きさに比例したロータ回転速度降下領域の存在することがわかった.これらを元に弾性滑りによる摩擦モデルを提案し,その検証を現在行なっている.それにはロータ摩擦部材の仕様を様々に変え速度降下の影響を調べたり,安定回転の為の細かな条件出しを必要とする.モデルは以前に東大の大越・佐田が提案した金属ロール同士の転がり接触モデルに非常に近い.摩擦部材は振動子先端と滑らずに接触を保ち,負荷トルクによるせん断歪が速度差を吸収して力を伝達する.本研究では実験後のロータ接触表面観察において,柔らかな部材を用いているにも拘わらず大きな磨耗は見られていない.このモデルが妥当であることになれば,等価回路及び振動方程式は非常に簡単になることが予想され,現実の挙動との対応がつく可能性が出てきた.この他等価回路推定の上で重要な項目は予圧や振動体の支持方法による損失である.現在内部インピーダンス変動との因果関係を調査中である.
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