研究概要 |
本研究は超音波モータの最適制御方法を提案するものである.従来困難とされてきた電圧と電流の位相差を一定に保つことによる共振点維持制御回路と駆動回路基板を先ず製作した.本格的な正弦波駆動を行ったことで,正確で安定な電流波形が得られ、位相差を正しく検出することに成功した.次にこの状態を維持しつつ定電流駆動及び定電圧駆動部を追加しモータ回転数を微妙に制御することが実現した.実用的には回路を簡略化して集積回路とすることも目処が立った.この回路により駆動側振動体の振幅等を正確に制御することが可能になり,回転体:ロータとの間の速度差について詳細に分析することが出来た.具体的には現象の類似性より,振動体と摩擦板の接触モデルが,数十年前に発表された曾田・大越・佐田による金属ローラの転がり接触モデルに極めて近いことが判明した.この説明によれば従動側であるローラ(摩擦板)は軽負荷トルク時にはせん断弾性変形するだけで実際には滑っておらず,安定な速度降下が得られるとなっているが,本研究における実測においても同様の結果が得られた.軽負荷領域における分析を更に進めた結果,モータ内部抵抗増加と負荷トルクの間に線形関係が存在することが明らかになった.従ってモータ電流を実測することにより端子電圧とトルクの関係が一意的に定まり,長年の主張であるトルクミラー回路(定トルク駆動用回路)の妥当性が立証された.また当時提案していた振動方程式の中での負荷トルクの扱いにも合致することが分り研究を集約することが出来た.残念ながら現在対外的に,この主張が全て理解された状況にはないが,一定の負荷条件下でサーボモータとしての速度安定性・再現性及び長寿命が得られる見通しが付き,将来この結果が工業商品化に結びつくことを期待したい.
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