静電気を用いてガラス板などを非接触で把持して搬送する場合、鉛直方向の把持は静電気力で行うことができるが、水平方向の把持力は小さいため、搬送するときはストッパーのようなものをつけて水平移動を抑える必要がある。このように、水平方向の把持力が弱い装置にてワークを高速で搬送する場合、ワークを把持する性能を高めて搬送中に離脱、落下が起きないようにすることが必要であるが、把持性能を高めると装置が大型化、重量増加して高速化への妨げとなる。 本研究は、慣性力を利用して把持力の増強を行う技術についての研究に関するものである。図1は、慣性力により把持力を増強させて搬送する様子の概念図である。静止状態にてワークを把持した後、加速動作するときはエンドエフェクタを傾けて、慣性力の一部を把持力になるようにして搬送する。制止するときは、逆方向に傾けて減速時に生じる加速度を把持力の増強に利用し、制止させる。このように、本研究ではワークを高速搬送するときに生じる慣性力を把持力の増強に用いるための基礎的な研究を行った。 動力学を行う場合、厳密なモデルでの計算は計算量が膨大なものとなり、大きな負担がかかる。そのため、計算量の少ない簡易モデルを構築する必要性がある。そのために、トラベリングプレートに関する力のつりあいに関する式をたてた。さらに、仮想アームに働く重力、アクチュエータの摩擦力等を考慮したアクチュエータの全トルクを計算して、これらを考慮した制御法の検討を行った。
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