研究概要 |
モバイルコンピュータや携帯電話など,今後ますます小型軽量化,高機能化するITデバイスの精密微細加工には,短パルスレーザの適用は不可欠となってきている.本研究は,IT機器のさらなる発展のため,短パルスレーザによる革新的精密微細加工システムを開発することを目的としている.具体的には,以下の研究を行うことで,この目的を達成しようと考えている:(1)高性能・高信頼性の加工プロセスモニタリングシステムの開発と応用,(2)レーザ精密微細加工データベースの構築,(3)仮想レーザ精密微細加工システムの構築 本年度は主に以下の項目について研究を行った.(1)高性能・高信頼性の加工プロセスモニタリングシステムの礎石づくり…ナノ秒パルスレーザによるSi穴あけ加工における表面プロファイルのマイケルソン干渉法による時間分解観察,(2)エキシマレーザを中心とした精密微細加工データベースの基本設計と構築,(3)仮想レーザ精密微細加工システムの礎石づくり…分子動力学解析による加工現象シミュレータの開発,非線形光学結晶におけるレーザ光吸収の第二高調波発生に及ぼす影響の理論解析システムの開発 得られた知見は以下のとおりである.(1)については,フルエンスが一定のとき,Siでは,ビーム径が小さいほど穴あけ効率が高いこと,これは,ビーム径が小さいほど蒸発反跳力による溶融相の除去効果が高くなることによること,約100nsで穴周囲に盛り上がりが生成し,約150nsでドロプレッとが飛散することなどが明らかになった.(3)については,psオーダの超短パルスレーザをAlに照射した場合,アブレーション形態が爆発的な場合と穏やかな場合の二つに大別できること,前者はレーザエネルギーの吸収による原子の運動エネルギーの急激な増加によるのに対して,後者はポテンシャルエネルギーの緩やかな増加に加えて,レーザ光吸収または近接原子の熱振動による原子の運動エネルギーの増加が細かい粒子の蒸発を引き起こすことなどを明らかにした.また,第二高調波発生では,温度上昇により位相整合が乱れると,高エネルギー密度ほど逆変換も顕著になること,ビームを集光するほど変換効率を比較的長時間にわたって高く維持できることなども明らかになった.
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