本研究の車輪移動機構が実現すればプロペラ推進型壁面移動ロボットの移動性能が格段に向上し、ほとんど全ての外壁形状・表層材料のビル壁面を搭載した動力源だけで自立移動できるようになると考えられる。本研究はその機構・制御方法を実験的に検証するためのもので、電動のテスト装置を実際に移動制御することで机上の検討では不十分な制御装置やセンサーに関する要求を明らかにする事を目的とする。 本年度は機体の基本構造・機構と制御装置をシミュレートできる電動の基本原理テストモデルを製作し、模擬壁面上で鉛直方向の移動実験を実施した。テストモデルは直流モーターで駆動される直径0.3mの車輪2個と方向をほぼ360°変化できる直径0.25mのプロペラ2枚で構成している。また模擬壁面は、幅0.9m、高さ1.8mで、庇の奥行きは0.9mとした。 Robomec'00で公表した移動方法は「連続走行移動法」と呼ぶもので、予想したように直角以上の角度の凹凸を容易に通過できることが実験により確認された。直角より小さな角度の凹部の通過では、コーナーに押し付けた車輪の反転トルクを利用する「機体振り上げ・下げ移動法」を新たに考案して実験し、「連続走行移動法」より短時間で滑らかに移動できることを確認した。これらの移動操作は、車輪駆動・ステアリングのマニュアル操作と、機体重量を支えながら機体を車輪接触面に押し付けるためのプロペラ推力とその方向角のコンピュータ支援制御に完全分離して分担され、安全かつ簡素な制御システムが実現可能なことが確かめられた。 なお実験中に車輪の浮き上がりが観察されており、車輪接触角センサーの中間的検討では、非接触な方法が適当と考えている。
|