本研究の車輪移動機構が実現すればプロペラ推進壁面移動ロボットの移動性能が格段に向上し、ほとんど全ての外壁形状・表装材料のビル壁面を搭載した動力源だけで自立移動できるようになると考えられる。本研究はその機構・制御方法を実験的に検証するためのもので、電動のテスト装置を実際に移動制御することで机上の検討では不十分な制御装置やセンサに関する要求を明らかにする事を目的とする。 平成13年度は機体の基本構造・機構と制御装置をシミュレートできる電動の基本原理テストモデルを製作し、模擬壁面上で鉛直方向の移動実験を実施した。ROBOMEC'00で提案した「連続走行移動法」によると、予想したように直角以上の角度の凹凸を容易に通過できることが実験により確認された。直角より小さな角度の凹部の通過では、コーナーに押付けた車輪の反転トルクを利用する「機体振り上げ・下げ移動法」を新たに考案して実験し、「連続走行移動法」より短時間で滑らかに移動できることを確認した。これらの移動操作は、車輪駆動・ステアリングのマニュアル操作と、機体重量を支えながら機体を車輪接触面に押付けるためのプロペラ推進力とその方向角のコンピュータ支援制御に完全分離して分担され、安全かつ簡素な制御システムが実現可能なことが確かめられた。 平成14年度の研究では、移動制御実験結果をもとにコンピュータ支援制御に必要なセンサの仕様を検討し、その結果を第8回ロボティクスシンポジアで公表した。その要約は、以下のとおりである。コンピュータ支援制御には機体傾斜角センサと車輪接触角センサの2種類のセンサが必要で、前者には航空機使用のジャイロスコープを後者には車輪の表面に多数の接点スイッチを埋め込むような単純な動作原理のセンサを新たに開発して使用するのがよい。
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