人間は何気なく物をつかみ、器用に操作できるが、多指ロボットハンドに同じことをさせようとすると非常に困難であることに気づく。ロボットの手が人間のそれと同じようなメカニズムをもち、関節に高性能のアクチュエータを配しても、困難であることに変わりはない。他方、物体把持に関しては、摩擦の無い指が何本あれば2次元(あるいは3次元)物体を2次元空間中(あるいは3次元)に固定できるかというフォーム閉包や力/トルク閉包の問題を中心にして沢山の論文が発表されている。今迄の研究によると3角形状の2次元の物体固定には3本の指が必要であり、平行四辺形状の物体については4本必要である。本研究の成果は、これらの研究結果とは異なって、指先を適当な半径をもつ半球にすると、任意の多角形状の物体が最少の2本の指で固定でき、かつ安定的に把持でき、かつ、姿勢角も制御できることを理論的に示すことに成功し、実験による確証も得た所にある。この成功の要因は、転がり拘束を用いると、指先と物体との間の拘束点で物体面に対して法則方向の力と接線方向の力がそれぞれ発生し、これらを指側から知覚フィードバックと容易に計算可能なヤコビアン行列を用いて自由に制御できることが、理論的かつシミュレーションで確認ができたことから来る。 本研究では、2002年度においては、物体の側面が平行でない場合についても、安定把持を実現する知覚フィードバック信号を見出し、また、物体の姿勢角を制御する信号も見出した。これらの有効性は、2自由度の指ロボットを2本製作し、これらの一対を用いた物体把持と物体操作の実験を通じて、確認することができた。また、詳細なコンピュータシミュレーションによって、各フィードバック利得の設計指針を与えることにも成功した。最後に、3次元物体の知覚フィードバックに基づく把持と操作についても、2002年末に至って基本的な手がかりを発見し得た。
|