研究概要 |
本研究は、把持の安定性の問題を扱ってきた。多指システムの総コンプライアンスは、第一に、指自身のコンプライアンスに由来し、第二に、しばしば把持の不安定性の原因となる、接触力の相互作用に由来する。我々の研究においては、安定性の特性を把持の力の分布と関連付けている。このため、安定性解析はコントロール・システムの階層性のプランニングレベルで行われる。このアプローチでは、剛性テンソルが線形化された剛体モデルにより直接導かれる為、人間に関する特性をモデル化する必要がない。 初めに、コンスタントな力を受ける剛性のポテンシャル関数が導かれ、接触力の分解により、剛性テンソルの構造が表現される。剛性テンソルは、重力および内部力に起因するものとの2つの要素を持つ。内部力のパラメータ化は接触点の組を通じて行われる。上記に述べた結果を延長すればパラレル構造メカニズムの力依存安定性を分析することもできる。さらに、このアプローチをシリアルメカニズムの安定性研究に用いることも可能である。このことを示すために、分析的フォームにおける二次元メカニズムの安定性条件を導き出した。 この研究においては、拘束人体運動における力分布の問題も調査した。拘束運動としてクランク回転運動を取り上げ,最適化による運動計画モデルとして,手先力変化最小規範を提案する。クランク回転運動の数学的モデルは、多指システムの最もシンプルなモデルとして考えられる、クランク回転運動では,非拘束下でのリーチング運動を再現する躍度最小規範やトルク変化最小規範で予測される運動軌道よりも,手先力変化最小規範によって予測された運動軌道が,ヒトの実験データをよく再現した。これは運動計画が腕やクランクなどのダイナミクスと関連して決定されることを示唆し,手先と外界との相互作用があるような条件下では,手先空間での滑らかさが運動計画に求められていると考えられる。
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