研究の結果得られた結果を以下に箇条書きに記す。 1.1機無限大母線系統モデルを基礎として再閉路失敗を対象として検討を行った結果、本研究にて提案している2台の限流器の並列設置方式により、再閉路失敗時においても系統の過渡安定度が大幅に改善されることを確認した。また、再閉路成功時の検討を行った結果、限流器の適用によって再閉路のタイミングを遅らせる、つまり無電圧時問をかなり延長できることを確認した。この結果として、再閉路失敗確率を低減できる可能性が新たに確認された。 2.2機9母線系統モデルを基礎として、各発電機端子にそれぞれ限流器を設置し、多数の故障点を考慮して検討を行った結果、故障電流の抑制では限流素子抵抗値0.5pu以上、安定度の改善では1.1pu程度、タービン軸系のねじれトルク振動の抑制に最も適している限流素子抵抗値は0.8pu〜1.1puがそれぞれ有効であることがわかった。従って、2機9母線モデル系統に対する効果的な限流素子抵抗値は、1.1pu程度であると考えられる。 3.WEST10機系統モデルに対しては、故障電流の抑制では限流素子抵抗値0.6pu以上、安定度の改善では1.0〜2.0pu程度がそれぞれ有効であることがわかった。従って、WEST10機系統に対する効果的な限流素子抵抗値は、1.0〜2.0pu程度であると考えられる。 4.多機系統における過渡安定度の定量的評価法および最適再閉路タイミングに関する検討を3つのモデル系統(1機無限大母線系統、2機9母線系統、WEST10機系統)を用いて行った結果、各発電機の運動エネルギーの変化分の累積積分値により系統全体の過渡安定度を評価できること、更に運動エネルギーが極小になった時点で再閉路するのが安定度改善の観点からほぼ最適であることを確認した。更に、運動エネルギーをリアルタイムに算出し、絶縁回復時間等の制約条件を考慮すれば、オンラインでORCTを決定できる可能性を有することも示した。
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