高圧配電線の雷被害率予測精度向上のためには、配電機材の正確なモデリングが不可欠である。配電機材の雷インパルス応答については、接地インピーダンスの周波数依存性や配電機材に見られる気中小ギャップの絶縁特性など未解明の課題も少なくない。 立上り時間が最短で100ns、波高値が最大2kVの可搬式のインパルスジェネレータを作成し、インパルス電圧を印加した結果、低周波での接地抵抗の実測値が数100Ωと大きい場合には、接地インピーダンスは高周波に対して容量性の応答を示し、同40Ω程度の場合には接地インピーダンスに周波数依存性は認められないことが判明した。接地インピーダンスの周波数依存性は複雑で等価回路表現が困難な上、配電線に生じる雷過電圧波形は数μsと短い波尾長を有するため、接地インピーダンスは40Ω程度の抵抗とみなして被害率評価を行うこととした。 波高値が最大320kVのインパルスジェネレータを作成し、ギャップ付き避雷器に印加し、ギャップのスパークオーバ電圧を求めた。印加するインパルス波形の波尾長が10〜50μsの範囲では50%スパークオーバ電圧に変化は認められなかった。これは、ギャップ中の電界が平等電界となっているためである。また、印加する電圧を変化させてギャップのv-t特性を特定したところ、右下がりの特性が得られた。 高圧配電線の雷被害率を評価するためには、雷サージの発生源である帰還雷撃電流波形を正確に把握する必要がある。平成14年度に得られた多地点での電磁界波形に基づいて負極性第一帰還雷撃電流波形の推定を行った。10例と検討事例が少なく、また、ばらつきも大きいため更に多くのデータの蓄積が不可欠であるが、波高値、波頭長、波尾長の平均値は、過去に報告されている電流波形測定から得られた値とほぼ一致した。
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