変圧器のモデルと中実がいしのスパークオーバ電圧やV-t特性について検討した。配電線に発生する雷過電圧波形は、標準雷インパルス電圧波形と比較すると急峻・短波尾波形となることが多く、また、このような波形が発生する場合に、スパークオーバが発生しやすいことから、過電圧評価に当っては、変圧器内部の共振の影響を考慮した等価回路を用いる必要があると考えている。また、がいしの絶縁特性については、V-t特性を用いてシミュレーションを行うのが正確ではあるが、計算がかなり複雑になるため、絶縁レベルが10号相当の中実がいしの50%スパークオーバ電圧として200kVを用いることは概ね妥当であると考えている。避雷器や架空地線が接続された高圧配電線における雷害対策の主たる検討対象は、直撃雷であることが確認された。有限な大地導電率を考慮した場合には、従来のように大地を完全導体と仮定した場合と比較すると10倍以上スパークオーバ率は大きくなることが明らかになったが、それでも直撃雷によるスパークオーバ率と比較すると誘導雷によるスパークオーバ率は1/10以下となる。本研究の結果は従来の手法による予測結果よりもより現実に近いシミュレーションとなっていると考えられるが、依然として、実際に報告されている、事故率とは、1桁近い相違が認められる。今後は、更なる被害率予測精度向上を目指して、雷の吸引空間を含めた直撃雷の発生確率や、多相スパークオーバから実際の事故に至る過程の解明に取り組む予定である。多地点での電界の同時観測結果に基づいて、推定した夏季雷パラメータの50%値は、海外において電流観測によって得られた値と概ね一致した。国内の送電線における電流観測によってもこれらとほぼ同様な結果が得られていることから、電界観測により波尾部分を含めた雷電流波形が推定できる可能性があることが明らかになったと考えている。
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