現在の電力系統では、電力事業の規制緩和にともない負荷側に分散電源が増加する傾向にあり、系統に逆潮流が発生するなどその構成は複雑化している。このような系統では、発電機を含むために電圧の安定性が問題になるなど、その運転状態の把握が重要になると考えられ、系統の静特性あるいは動特性をオンラインで測定することができるならば系統の安定度解析が精度良く行われ得ると考えられる。 そこで分散電源を含む負荷電力系統を対象に、その運転状態把握を超電導エネルギー貯蔵装置(SMES : Superconducting Magnetic Energy Storage)を用いて行なうことを提案し、SMESの多機能化・有効利用を図ることを目的として研究をスタートした。本年度は、まずバイポーラ電源とRT-Linux(リアルタイムリナックス)をOSとしたパーソナルコンピュータを用いて、電力系統シミュレータ用のSMESモデルシステムを設計・製作した。さらに、系統シミュレータにおいて例題系統を構成し、製作したモデルSMESを設置して、これから系統に与える微小電力変動を正弦波状あるいはチャープ状とし、様々な運転条件での状態把握実験を行った。実験結果からは、この微小電力変動信号に対する系統の応答から、運転中の分散電源数や分布、配電線潮流の違いがある程度モニターでき、これを用いた負荷系統の状態把握が可能であることが確認できた。 さらにシステム同定の手法により、SMESの電力変動入力に対する負荷系統応答の伝達関数を求めることで、固有値の情報から運転状態を把握できることも示された。今後、分散電源を含む負荷系統の状態把握は重要な課題となると思われるが、本研究で示したSMESによる負荷系統の状態把握手法を用いれば系統運用に有用であると考えられる。得られた伝達関数をどのようなモデルとして負荷モデルに適用するかが今後の課題となる。
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