研究概要 |
二次元磁気特性測定装置(ベクトルヒステリシスアナライザーと呼ぶことにした)による二次元ベクトル磁気特性を測定した。このデータ量は従来のそれを遙かに超えるもので、100MB以上のメモリ容量を有する。この測定されたベクトル磁気特性を材料構成方程式で表すため、E&SS(Enokizono & Soda, Shimoji)モデルを構築し、このモデルを導入した有限要素解析でシミュレーションによる概念設計を行った。モータの鉄心構造として、積層セグメント方式が採用された。材料として、無方向性電磁鋼板、方向性電磁鋼板、並びに二方向性電磁鋼板が選択された。これらの材料についてE&SSモデルを導入した磁気特性解析によって、モータの鉄心内の磁束密度ベクトルの軌跡、磁界強度ベクトルの軌跡の分布が解き明かされ、これより従来未知であった鉄損分布を明らかにすることができた。これより、方向性電磁鋼板を使用することによって無方向性電磁鋼板の場合に較べて損失が半減することが明らかとなった。二方向性電磁鋼板の場合は両鋼板の中間に位置していた。この方向性電磁鋼板を設計する際の留意点は回転磁束の軸比を0.3以下に保ち、磁束密度ベクトルの容易軸からの傾き角を30度以内になるように設計しなければ、無方向性電磁鋼板を上回る低損失化は得られなくなる。さらに、モデル鉄心を作成し実測による検討をおこなった。その結果から得られたことは、材料特性に即した設計を行わないと、単に材料を置き換えただけで良好な特性は得られない。それは磁気特性が向上するとインダクタンスが増加するため電流が押さえられて、高磁束密度化が困難となる。このことから、高効率モータを開発するためには高磁束密度化のために高電圧化・定電流電源駆動が求められる。
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