鹿児島県は毎年台風が接近し上陸する特殊な地域であり、それによる電力系統の被害は甚大である。停電などが発生すると社会生活に多大な悪影響を及ぼし、電力会社の損失も極めて大きい。台風被害の発生時、迅速な復旧作業を行うためには、台風被害発生前に設備被害を予め計算できる正確な設備被害予測器が必要である。 本研究では、気象庁などから入手できる台風の気象情報を基に、配電系統設備被害を予測する手法について考察した。すなわち、台風被害予測のための入力として、台風進路、風速、進行速度、暴風半径、中心気圧、などを考える。出力としては条径間電線被害件数、支持物被害本数、などを選んだ。その際特に、台風進路は台風被害に極めて強い相関があり、例えば遺伝的アルゴリズム(GA)により最適にパラメータ値設定されたガウス関数を、対象地の鹿児島に設置する。これを通過する台風のガウス関数標高地の平均で、台風進路を数値化するなどの手法を導入した。 設備被害予測器の構造としては、2段階予測法が極めて有効であることが判明した。すなわち、最も基本的な部分としての1段目予測に、例えばGMDH形二次多項式モデル式を用いる。これだけでは予測不十分である部分を、2段目予測の回帰モデル式、又はニューラルネットワークやRBFネットワーク等で補正する。その結果、全体として精度良い予測器を合成する構造である。本手法を過去13年間に鹿児島地区に接近した29個の台風に適用し、過去の実データを使った台風被害予測の計算機シミュレーション実験を行った。その結果、本予測器の有効性が示された。なお、実用化に関しては、解決されねばならない多くの問題があり、これらは今後に残された研究課題である。
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