近年、電磁力による物体の支持に関する研究が活発化している。ベアリングレスモータはモータが発生する電磁力を利用して回転する主軸を支持する物である。そこで、真空、低温、高温などの雰囲気、危険な流体、長寿命と信頼性が要求される応用などへの適用が期待されている。すなわち、半導体製造装置に用いられるガス移送ポンプ、真空雰囲気を形成するターボ分子ポンプ、また、信頼性が要求される原子炉の冷却水ポンプ、液化天然ガス移送ポンプなどである。 すでに、誘導機形ベアリングレスモータにおいて過負荷時においても安定に主軸を支持できる制御システムを提案してる。しかし、長時間運転すると電動機の温度が上昇し、回転子巻線の温度が上昇し、主軸の磁気支持のダンピングが低下し、遂にはタッチダウンする恐れがあった。 そこで、本研究では、磁気力支持が不安定になる原因が回転子巻線の温度上昇に起因することを明らかにした。すなわち、回転子の温度が上昇し、回転子巻線温度が増加すると、制御システムが設定したギャップ磁束と実際のギャップ磁束に位相差が発生する。この結果、半径方向力の直交2軸間に干渉が生じてしまい、半径方向位置制御系の位相余有を減少することを明らかにした。 さらに、主軸の重量を支持するために半径方向力の指令値が鉛直方向だけに発生する点に着目し、温度の上昇とともにフィードバック系が自動的に水平方向の半径方向力指令値を発生することを明らかにした。この水平方向の半径方向力指令値から回転子の抵抗値を予測するフィードバックシステムを構築することを提案した。この新たに提案したシステムの有効性を実験により確認した。 なお、長時間運転するためには、半径方向の主軸位置センサの温度ドリフトが問題になり、引き続き検討が必要である。
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