現在用いられている熱電変換材料と比べ高い熱電性能指数(ZT)が期待されるMg_2Siについて、バルク結晶を得るための各種育成条件の抽出および多結晶試料の育成を行った。 試料作製 -結晶成長法として高い品質の結晶育成が期待できる垂直ブリッジマン(VB)法によりMg-rich組成(モル比Si:Mg=1:9)の原料組成を用いMg_2Si結晶を析出した。 -昨年までに確認したカーボン系アンプル材においてパイロカーブ高純度焼結カーボン(PG)を新たに導入し、育成プロセスの改善を行った。このアンプル材では十分な融液とアンプル材との間の撥液性を確保することができ、今後展開する予定の任意形状Mg_2Si結晶育成が可能であることが示唆された。 -PGるつぼにより育成された結晶は、X線ディフラクトメータ法測定から従来育成してきたMg_2Si結晶と比較して飛躍的に結晶性の改善が見られた。 -PGるつぼの導入に際して、育成炉の温度勾配と育成速度、仕込み原料組成の最適化(モル比Si:Mg=3:7)を図り、Mg_2Si多結晶の育成が可能となった。これにより、従来はMg_2Siと金属Mgの混相からなる結晶が主に得られていたが、育成試料の大部分がMg_2Siのみからなる結晶を再現性よく育成する条件を抽出することができた。 総括 -るつぼ材としてパイロカーブ高純度焼結カーボン素材の検討をおこなった結果、Mg_2Si結晶育成に極めて有効であることが認められ、ほぼMg_2Siのみからなる多結晶試料の育成が確認された。今後は単結晶育成のための条件を調べ、育成材料の電気的特性・熱電特性を詳細に調べていくつもりである。
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