気体の絶縁破壊電圧は、気圧にほぼ比例して増加する。そこで先ず、測定できる気圧範囲を広げるために、予備実験で用いたインパルス電源の出力電圧を高くする改造を行った。また、次年度予定している破壊が生じるまでの遅れ時間を測定するために、印加電圧の立ち上がり時間を短くする改良を合わせて行った。その結果、出力電圧を30kV、立ち上がり時間1μs以下の波形を出力できるようにした。次いで、改良した電源を利用して絶縁破壊電圧の気圧依存性を測定し、5気圧までの測定を行う事ができることを確かめた。さらに、気圧と電極間距離をそれぞれ変化させ、いわゆるパッシェン特性を得ることができ、次年度から予定している実験を進めるための基礎データを得る事ができた。 一方、本研究の主題である励起分子の寄与を明らかにするため、放電によって発生する励起分子の検出方法の確立を進めた。実験では、四重極質量分析装置を利用した、しきい値イオン化質量分析法を用いて、窒素励起分子の検出を試みた。その結果、励起分子の電子衝突による電離断面積から予測できる予測値と測定結果とが一致する結果が得られ、励起分子ができたものと判断した。これらの結果から、放電によって発生する励起分子の数密度を予測する事ができた。また、励起分子は定常放電よりもパルス的な放電によって多量に発生する事も実験的に確かめる事ができた。これらの結果から、励起分子が絶縁破壊特性に与える効果を実験的に確かめるためには、ストリーマ放電によって励起分子を空間に供給し絶縁破壊の遅れ時間を測定する事が効果的であることを示す事ができ、本実験を行うための実験条件を設定することができた。
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