初年度には、5気圧まで加圧した条件で絶縁破壊特性を測定できるように装置を改良し、いわゆるパッシェン特性が成立することを確かめた。これらの成果を基に、本年度は、放電で発生した活性種の空間での蓄積が後段の絶縁破壊特性に影響を与えることを確認するため、密閉容器中にガスを充填した後、一定の時間間隔で電圧を印加して破壊確率と放電が発生した場合の放電遅れ時間を測定した。その結果、電圧印加を20回続けた後にガスを交換して同様の測定を繰り返した場合と、ガスを交換せずに継続して実験を繰り返した場合とで、明らかに破壊確率に違いの生じることが確認された。つまり、ガスを交換すると破壊確率はほぼ一定の値が保たれるのに対し、ガスを交換せずに実験を続けると破壊確率は実験回数とともに次第に増加した。また、その場合の放電遅れ時問は、短くなる傾向も確かめられた。 一方、放電によって発生する窒素の中性励起分子を四重極質量分析装置を用い、しきい値イオン化質量分析法により検出した。放電により多くの中性励起分子が発生することは初年度の実験によって確かめられているが、放電時間が短くなるほど発生量は増加することが確かめられた。また、いわゆるストリーマ放電により多量の励起分子の発生が確かめられた。 破壊確率や放電遅れ時間が放電の繰り返しによって変化する事実と、放電によって多量の中性活性種が生成することは、それぞれ、独立の実験によって確かめられた。しかし、これが放電で発生した電荷の蓄積による影響か、中性の活性種が原因しているかを確かめるため、放電によって発生した電荷を次の電圧印加までの時間に空間から掃引させるため、電極間に定常的に直流バイアス電圧を印加させた条件で測定するための準備を整えた。
|