予備実験の結果より、密閉容器中に窒素を封入して放電を繰り返すと、破壊回数が増えるとともに破壊確率が上昇し、あわせて、放電遅れ時間の減少が認められることを明らかにした。本研究では、先ず、コロナ放電を発生させた後に主電極間に電圧を印加して絶縁破壊特性を測定した場合にも、破壊確率の上昇が認められ、放電遅れ時間の減少が顕著であることを確かめた。 そこで、放電で発生した活性種の空間での蓄積がこれらの現象をもたらす原因であることを確かめるために、コロナ放電電荷量を制御した条件で、コロナ放電発生後の時間経過による絶縁破壊特性の変化を実験的に確かめた。これは、コロナ放電電荷量に比例して活性種の発生が変化すること、また時間とともに活性種は拡散あるいは再結合によって消滅することが期待できるため、空間に残留する活性粒子数がコロナ放電電荷量と時間によって変化することを期待したためである。測定の結果、コロナ放電発生後5秒経過後に絶縁破壊特性を測定した場合と、30秒経過後に測定した場合とを比較すると5秒後のほうが破壊確率は高くなったが、その変化はわずかであった。しかし、放電遅れ時間の変化はラウエプロットに描いて比較すると、その傾きは5秒後のほうが2倍程度大きな値となり、また放電電荷量が多い場合のほうがいずれの傾向も顕著に現れることが確かめられた。 次に、中性活性種がこれらの現象をもたらす原因となっていることを確かめるため、荷電粒子を空間から除去することを期待して定常的に電極間にバイアス電圧を印加して絶縁破壊特性を測定した。その結果、バイアス電圧が低い場合には電圧とともに破壊確率は低下し、荷電粒子の除去の効果が現れていることが確かめられ、上記の現象が中性活性種の蓄積によるものと考えて不合理ではないと判断できた。しかし、印加電圧が高くなると、破壊確率がむしろ増加の傾向が現れた。 以上の結果より、空間に中性活性種が蓄積することにより絶縁破壊特性が変化することは実験的に確かめられた。しかし、活性中性粒子の絶縁破壊特性に与える影響の定量的な検討、およびバイアス電圧の依存性に関しては、更なる検証を必要とする。
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