研究概要 |
FACTS(Flexible AC Transmission Systems)機器の制御・回路構成に関する研究は従来より多くの研究例があるが,系統と錬系した場合のFACTS機器および系統の挙動について,特にサージなどが侵入した場合の過渡現象の解析はあまり解明されていない。そこで,本研究では,FACTS機器の中でもっとも基本的な構造をもつ系統錬系インバータを対象とした地絡サージ解析を実施した。この系統錬系インバータは風力発電などの分散型電源を想定したものであり,実際に商用運転しているウィンドファームを対象として,66kV送電系統と連系した簡易モデルによりEMTP解析を行った。解析はもっとも単純な一機無限大系統モデルの一線地絡事故を始めとし,二回線モデルでの三線地絡事故,遮断器による系統遮断・再投入など実事故に近いケースを想定して計算を行った。 解析の結果,従来の同期発電機が末端に存在する系統に比べ,系統連系インバータが連系されている送電系統は,地絡などのサージの侵入に対し脆弱で,事故の影響が非常に大きくなることが確認された。また遮断器による遮断・再投入の際にも,従来の系統には見られなかった大きなサージが発生することが明らかになった。このことから,系統連系インバータによる分散型電源を多数系統に連系する場合には,インバータになんらかの効果的な制御方法が必要であることがわかった。また,TCSCやSTATCOMなどの他のFACTS機器との組み合わせにより,サージに対する対策が必要であることもわかった。 本研究の報告は,電気学会および米国電気学会(IEEE)にて発表予定である(論文原稿は提出済み)。
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