研究概要 |
本研究は,FACTS機器等の新電力機器を対象としたサージ解析手法を確立することが目的である。 本研究では,平成13年度に,FACTS機器の中でもっとも基本的な構造をもつ系統連系インバータを対象とした地絡サージ解析を実施した。解析にあたっては,従来より学会等で広く用いられている解析プログラム「EMTP」を採用した。系統連系インバータは風力発電などの分散型電源を想定して,66kV送電系統と連系した簡易モデルによりEMTP解析を行った。解析はもっとも単純な一機無限大系統モデルの一線地絡事故を始めとし,二回線モデルでの三線地絡事故,遮断器による系統遮断・再投入など実事故に近いケースを想定して計算を行った。 平成14年度には,ディジタル瞬時値系統解析システム「ARENE」を導入し,同様の系統連系インバータのモデルに対して解析を行った。また,事故モデルに関しても,系統側で発生する地絡事故だけでなく,落雷等により新電力機器側で発生するサージに関してもモデリングを行い,解析を試みた。 解析の結果,従来の同期発電機が末端に存在する系統に比べ,系統連系インバータが連系されている送電系統は,地絡などのサージの侵入に対し脆弱で,事故の影響が非常に大きくなることが確認された。また遮断器による遮断・再投入の際にも,従来の系統には見られなかった大きなサージが発生することが明らかになった。また,新電力機器側から発生するサージは,接地や避雷器の条件によっては,系統側へサージを流出してしまう可能性があることが明らかになった。 このことから,FACTSや分散型電源などの新電力機器を系統連系インバータを介して系統に連系する場合には,接地や避雷器などの詳細な絶縁協調設計が必要不可欠であることが明確となった。本研究の成果は,新電力機器のサージ対策,絶縁設計の方法論の確立に貢献できるものと期待できる。
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