本研究は、シリコン酸化膜(SiO_2)中にナノサイズのゲルマニウム(Ge)微結晶を自己集合化し、それらが作る量子井戸に電子を1個ずつ捕獲させることを目的としている。さらに、ニューラルネットワークの適用学習型電子デバイスとして動作させることについて検討した。SiO_2中のGe結晶は量子ドットを形成しており、0次元の量子閉じ込め効果により可視発光することが報告されている。本研究は、SiO_2を含有した珪素化合物とGeO_2を主成分とした有機金属溶液を混合し、酢酸エチルで希釈した溶液を試料表面にスプレースピン塗布した。焼結のための熱処理を行った結果、800℃以上の温度でGe微結晶が成長していることをラマン分光スペクトルより確認した。また、ラマンピークの半値幅からGe結晶サイズを見積もった結果、平均で3.1〜5.2nmであった。結晶サイズ径は熱処理温度の上昇に伴い増加する傾向が見られた。次にHe-Cdレーザー励起によるフォトルミネッセンス測定を行った結果、量子閉じ込め効果による強い青色発光(波長420nm)が室温で観測された。次にMOS構造を作製し、SiO_2/Ge/SiO_2量子井戸に電子を注入することを試みた。容量-電圧(C-V)測定を行った結果、電子注入後、電子捕獲によるフラットバンド電圧の正方向シフトが確認された。電流-電圧(I-V)特性によるSiO_2中の電気伝導を調べた結果、ステップ状の電流変化および低電圧側からのリーク電流の増加が確認された。二重障壁量子井戸構造を仮定したトンネル伝導計算を行った結果、実験データは量子共鳴トンネル伝導を忠実に再現していることが判明した。今後は、SiO_2中のGe結晶径の制御および深さ方向制御ができるようプロセスの最適化を図る。さらにMOSFET構造でのデバイス動作を確認し、シナプス動作を実現させる。
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