研究概要 |
本研究では表面磁気異方性の発現機構を明確にすると共に,それを積極的に利用した巨大磁気異方性ナノ粒子を創製することを目的として研究を進め,以下のような成果を得ている. 1.人工格子膜を用いた表面磁気異方性の研究 磁性体の表面磁気異方性については未知の部分が多いので,巨大な表面磁気異方性を実現する為の指針が明らかでない.そこで本研究では,表面研究に理想的な人工格子を用い,表面異方性の研究を行なった. (1)表面異方性の発生機構:表面異方性は価電子数に強く依存する事が予想される.そこでFe〜Niの合金人工格子を作製し,表面異方性の価電子数依存性を調べた.表面異方性はCoで最大となり,この結果は空間対称性の破れを考慮したNeelモデルで良く理解できることが明らかになった. (2)表面異方性の増大:3d遷移金属で最大の表面異方性を示したCoを主体として,表面異方性の増大を試みた.特にスピン軌道相互作用の大きい元素に着目し,その添加効果を系統的に調べた.その結果,軽希土類である微量Smの添加により,異方性が1.3〜1.5倍に強調されることが判った,これはSm添加によりCo軌道モーメントのエンハンス効果に起因する.更に,Pdのような水素吸蔵性を有する物質でCoをサンドイッチし,水素吸蔵によりCo格子を膨張させても顕著な表面異方性強記効果が現れることを確認した. 2.ナノ磁性粒子における表面磁気異方性の影響 (1)気相凝縮により作製した完全孤立系Fe,Co,Niナノ微粒子の磁気挙動を詳細に調べた.その結果,それらの粒子のスピンは,バルクよりも遥かに高い有効磁気異方性の下でコヒーレントな挙動を示すことが確認された.この高い有効異方性は表面異方性に起因するものであり,明らかにナノ磁性体における表面効果の重要性を示している. (2)上記ナノ粒子の一連の磁気挙動を,高い有効磁気異方性を仮定することにより,全てLamdau-Lifshitz-Gilbert方程式に基づく数値計算で再現することができた.
|