研究概要 |
低速陽電子ビームを用いてEu及びTbドープGaNの空孔型欠陥を評価した.希土類ドープGaN薄膜は,サファイヤ(Al_2O_3)(0001)面基板上にアンモニアを窒素源としたガスソースMBEにより製作した.原料は純度6Nの金属Gaと3NのEu、Tbを用い、通常のKセル(Knudsen effusion cell)より蒸発させた.RHHED測定より,Euのドープ量は0.1,2,16 at.%,Tbのドープ量は0.8 at.%であると決定した.また,X線回折の結果から,試料は単結晶であることを確認した.一方,(0002)に対応する回折線の反値幅はTbドープ試料よりEuドープ試料は広く,Euドープにより結晶品質が低下している.PL測定により,両試料の発光特性を調べた結果,Euドープ試料では,母体GaNに関係する発光は観測されず,Eu^<3+>イオンの内殻遷移による発光のみ観測された。それぞれの遷移は^5D_0→^7F_<1,2,3>と同定した.Tbドープ試料についても同様に測定した結果,室温ではEuイオンの内殻遷移による発光は観測されなかった. 上記の試料について陽電子・電子消滅γ線ドップラー拡がりを測定した.測定したドップラー拡がりはSパラメーター及びWパラメーターで評価した.測定結果から,TbドープGaNについては,均一に空孔型欠陥が分布していたが,Euドープ試料では,GaN/サファイア界面近傍で欠陥の集合が起こっていることがわかった.加えて,空孔型欠陥のサイズが大きくなるほど,発光特性は上昇し,主な発光は,最も大きなサイズの空孔が集中する界面で起きていると結論した.空孔型欠陥が導入されることによりEu近傍の対象性の低下が,内殻電子の移確率の上昇を引き起こしていると考えられる.同時計測ドップラー拡がり測定より,欠陥サイズは複空孔以上のサイズを持つ空孔クラスターであると同定した.
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