研究概要 |
将来のナノエレクトロニクスデバイスにおいて、高密度のサイズが均一な量子ドットが必要とされているGaAs高指数面基板上のInGaAs量子ドットは、整列性、均一性に優れた自己組織化過程を経て形成される。このとき、InGaAsドット表面は相分離によりInAs-richになっていることを明らかにし、ドット間には斥力が働くことでドット同士の合体が抑制され、また高密度化することが分かった。次に、前年度に引き続きGaAs(311)B基板上のIn_<0.4>Ga_<0.6>Asドット群の中で,円対称性に優れた単一ドットの量子エネルギー状態を低温プローブ顕微鏡を用いて調べた。InGaAs/GaAs自己組織化量子ドットの場合,ドット層の上に薄いスペーサ層を介して次のドット層を成長させると,下層のドットの直上に次のドットが形成される性質に着目して,最表面のドット層をナノマーカーおよびナノエミッタとして用い,探針プローブからトンネル障壁層のスペーサ層を介して,直下に埋め込まれた単一ドットに電子を理想的には一つずつ注入することを試みた。当該年度はまず測定環境の改良を行い,任意に選択した単一ドットに対して制御性良く単電子の注入ができるようにした。量子ドットの人工原子的な振る舞いを精度よく測定することを可能とし,特有の殻構造が形成されることを明らかにした。さらに,隣接したドット間に弱く結合が生じている場合は,ドット間のトンネル障壁層中にまで電子の波動関数がしみだしているため,電流が流れやすい状態になっており,人工分子的性質が期待できることを明らかにした。このことはまた量子ビットなどへの応用が期待される。
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