当研究室では、これまでにSiナノ結晶(nc-Si)分散薄膜において膜厚方向に結晶サイズ分布の周期的な変調を与え、このDBR構造を利用したFabry-Perot共振器を構成することによってスペクトル幅を20meV程度まで狭くできることを示してきた。本研究は、上記のDBR構造にさらに光波長オーダの2次元周期構造を加え、いわゆるフォトニック結晶を構成することによる3次元的な光閉じ込めを実現し、より高レベルの放出光モード制御を実現することを目的としたものである。nc-Si分散薄膜に高次の周期的な構造変調を与えることにより、発光素子へ応用する上での課題、発光波長の選択性と発光効率の向上を同時に解決できる点にある。平成13年度は、主に下記について研究を行った。 ・単層のnc-Si分散薄膜に2次元三角格子フォトニック結晶を形成。 ・作成したフォトニック結晶の光透過スペクトル測定。 nc-Si分散薄膜のベースとなるa-SiO_x薄膜は、プラズマCVD装置を用い、シラン(SiH_4)と酸素(O_2)を原料ガスとして堆積した。試料は成膜後1100℃で1時間の熱処理を行い、膜中にnc-Siを分散生成させた。電子ビーム(EB)描画装置を用い、400nm周期の2次元三角格子パターン(r/a=0.35)をもつマスクを形成し、CF_4+O_2プラズマエッチングにより薄膜に微細パターンを形成した。ファイバ光学系を主体とした分光計によりフォトニックバンドギャップの観察を試みているが、これまでのところ良好な結果は得られていない。SEMによりマスクパターン及びエッチング後の試料について表面観察を行った結果、マスクパターンは良好に形成されているものの、エッチング後はパターンの乱れや消失が起こっていた。
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