Cu源として酢酸銅、In源としてインジウムアセチルアセトネート、S源としてチオ尿素を含んだ溶液を霧化し、加熱したガラス基板に吹き付けることによりCuInS_2薄膜の製膜を試みた。その結果、次のような知見を得たが、CuInS_2薄膜は得られず、太陽電池の作製や、精細な物性評価を行なうのには至らなかった。 1.超音波で霧化させる方法で、溶媒を変えてCuInS_2の製膜を試みた。溶質の可溶性の問題から、エタノールと脱イオン水を混ぜたものとエタノールまたはメタノールのみの溶媒とを比較した。その結果、エタノール+脱イオン水を用いた場合は、脱イオン水が霧化されにくく、溶質が残ってしまうだけで、基板上には製膜できなかった。一方、エタノール又はメタノールを用いた場合は、薄いながら膜が形成された。しかし、堆積膜の組成は著しいCu過剰で、溶質の仕込みが化学量論組成であったのにもかかわらず、極端にInの比率が少ないものとなった。また、X線回折でもCuSと思われるピークのみが確認できた。これは、エタノールやメタノールにインジウムアセチルアセトネートが溶けにくいことや、基板温度が高いためInがInSとなり昇華してしまうといったことが考えられる。溶媒を適切に選定しなおす必要もあると思われる。 2.噴霧器を用いた霧化も試みた。その結果、噴霧器を用いると、不均一な粒子が堆積するのに対し、超音波を用いると、堆積量は減少するが、細かい粒子が均一に基板上に堆積している。良好な膜を作製するには超音波を用いた方法が有効であると考えられる。
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