In源に塩化インジウム、Cu源に塩化銅と酢酸銅を用いて、Cu/In金属膜の作製を行った。銅の原料に塩化銅を用いると、Inに比べて堆積量が極めて少ないため、酢酸銅が有利であった。キャリアガスはArを用いた。溶媒として、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール、純水を試したが、液滴の凝集の問題のないメタノールが有利であった。また、酢酸銅/塩化Inの組成を1:1として、金属膜堆積温度を300、350、400℃で堆積すると、300℃ではIn過剰、350℃で1:1、400℃ではCu過剰となった。EPMAにより組成の面内分布も調べたが、ほぼ均一に銅とインジウムが堆積していることがわかった。ただし、X線回折によると、堆積しているのは銅とIn_2O_3であった。 以上の金属積層膜を従来からのH_2Sガスを用いた硫化プロセス(H_2Sガスを含む雰囲気で530℃にて30分熱処理)によってCuInS_2膜を作製した。このとき、金属膜の堆積温度が、350℃のものでは、良好なCuInS_2単相膜が得られた。一方、より高温400℃以上で金属膜を堆積した試料では、硫化後も酸化インジウムが残ることが、X線回折によってわかった。このIn_2O_3は導電性が高く当初の目標の太陽電池には不利である。ただし、400℃の堆積温度でも、酢酸銅を塩化インジウムの1.7倍使用する実験では、X線回折図からはIn_2O_3が検出されず、銅過剰組成を用いると有利であることを示している。 超音波噴霧法でCuInS_2膜を一度に堆積することは出来なかったが、従来法では真空蒸着を用いて金属膜を堆積していたものを超音波噴霧に置き換え、良好なCuInS_2膜を得ることができた。基板温度の制御と銅過剰の組成が重要であった。
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