カルコパイライト薄膜であるCuInS_2薄膜は特性やコスト面など現在用いられている太陽電池材料と比較して優れた材料である。この3源材料を含む溶液を基板材料に吹き付ける方法(スプレー法)に注目した。スプレー法はコスト面において優れた作製方法である。本研究ではスプレー法を改良し、超音波噴霧熱分解法をCuInS_2薄膜の作製に用いることで、CuInS_2薄膜を作製した。本研究では、超音波噴霧熱分解装置を作製し、CuInS_2薄膜の作製方法と膜組成、表面状態について検討した。 三源溶質を用いたCuInS_2薄膜の作製において全溶質を混ぜ合わせたところ、白色の沈殿物が生じた。そこで、Cuを含む溶質とInを含む溶質を噴霧し、Cu-In膜を堆積した後にSを含む溶質を噴霧し、硫化を行う二段階法による作製方法最初に検討した。Cu-In膜、硫化膜における膜状態は繊維状の物質から成り立っており、通常の作製方法により得られる結晶状態とは異なっていた。また、膜中にはCuInS_2が生成しており、作製することが可能となったが、酸化物の生成も確認され、太陽電池材料として用いる場合に不都合になると思われる。 さらに、Cu-In金属積層膜をチオ尿素を含む溶液のスプレーにより硫化する方法、Cu-In金属をスプレーした後に、チオ尿素を含む溶液をスプレーする方法も行い、CuInS_2膜を作製することができた。 硫化膜において、酸化物の除去をするためにKCN処理を行った。しかし、いずれの実験でも酸化物の除去は確認されなかった。このスプレー法によるCuInS_2薄膜を太陽電池に応用するためには、この酸化物相を取り除く必要がある。
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