研究概要 |
コバルトと白金あるいは鉄と白金を等原子比で含む合金を高温で熱処理すると面心正方格子構造の規則合金に変態し,非常に大きな結晶磁気異方性を示すことが知られている。本研究ではコバルト・白金および鉄・白金合金をアルマイト皮膜の微細孔中に充填し,高保磁力を示す磁性膜を作製することを試みた.まず,硫酸中で陽極酸化して作成したアルマイト皮膜の微細孔(直径約15nm)中に白金とコバルトをこの順に積層電着した.コバルトだけを充填した場合には保磁力が1.7kOe程度であるが,白金下地を用いると保磁力が2.5kOe程度まで向上することがわかった.この試料を真空中500℃で熱処理すると,保磁力がさらに向上して2.8kOeに達した.次に,シュウ酸中で陽極酸化して作成したアルマイト皮膜の微細孔(直径約50nm)中に鉄と白金を20:1の割合で含む水溶液を用いて鉄・白金合金を充填した.パルス電圧(オンタイム:10ms,オフタイム:90ms)を加えて電着した.鉄含有量はパルス電圧8Vの時の28%から11Vの時の36%までパルス電圧の増加とともに増えた.しかし,さらにパルス電圧を上げると鉄含有量が少し減少し,32%前後でほぼ一定になった.パルス数を一定に保って電着すると,飽和磁気モーメントはパルス電圧とともに直線的に増加し,11V以上でほぼ一定になった.保磁力は8Vの時の0.5kOeからパルス電圧とともに増加し,11V以上では0.9kOe程度で一定になった.パルス電圧8Vで作製した試料を真空中600℃で熱処理すると,保磁力が0.5kOeから1.2kOeまで,2倍以上増加した.しかし,熱処理前に大きな保磁力を示す試料ほど熱処理による保磁力の改善効果が小さくなった.
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