乱れた半導体系における微視的・動的電気伝導度に対する繰り込群(あるいはスケーリング)方程式から出発し、周波数と温度をパラメータとした巨視的交流電気伝導度を記述するマスター方程式を構築し、温度・周波数領域での交流電気伝導度のスケーリング則(交流電気伝導度を直流電気伝導度で規格化し、周波数軸を温度とバンド端局在準位幅に関連した有効緩和時間でスケールすると、すべての実験データが同じ理論曲線に乗る)を完成させ、バンド端局在準位幅の定量的評価・解析法を吟味した。さらに、10kHzから100MHzの広い周波数範囲で、交流電気伝導度を測定する評価技術を立ち上げ、これを、プラズマ化学堆積(CVD)法で製膜される標準的なデバイス級i型水素化アモルファスシリコン(a-Si : H)ならびに水素化微結晶シリコン(mc-Si : H)に適用した。この測定の結果を理論的に吟味・解析することによって、a-Si : Hおよびmc-Si : Hの伝導帯裾のエネルギー拡がりが、それぞれ、1000meV、20meV程度であるとの知見を得た。これらの値は、従来の関連実験結果と整合するもので、この研究で新規に構築した交流電気伝導度理論の妥当性を確認することができた。また、a-Si : Hに光照射を行い、伝導帯裾の変化を捕えようとしたが、これは検出可能範囲外であった。このことは、光照射によって、価電子帯裾状態にのみ変化が与えられるとした我々の主張を指示するものであると言える。
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