本年度は、高速電子デバイス材料として用いられているIII-V族半導体基板上へのGe_<1-x>Mn_xTe薄膜成長、MnTeとの積層構造作製による磁気特性の制御およびGe_<1-x>Mn_xTeの磁気相転移について検討を行い、以下の知見を得た。 (1)これまでGeTeより格子定数の大きなBaF_2(111)基板を用いてきたが、Mn濃度が高くなるにつれGe_<1-x>Mn_xTeの格子定数が小さくなることから、GeTeより格子定数の小さなGaAs(100)およびInP(100)基板上へクラスタイオンビーム法によるGe_<1-x>Mn_xTe薄膜のヘテロエピタキシャル成長を試みた。その結果、GaAs基板に比べ、より格子定数がGe_<1-x>Mn_xTe(Mn組成x=0.4の場合)に近いInP基板で、比較的良好な平坦性をもつ膜が得られた。しかしながら、InP基板において、Ge_<1-x>Mn_xTeは(111)に配向しており、良好な結晶性を得るためにはさらなる改善が必要である。 (2)積層膜における磁気抵抗効果をセンサー等に利用するには、各磁性層間の磁化の平行および反平行状態の実現が不可欠である。そこでGe_<1-x>Mn_xTe上へMnTeを成長させることによってGe_<1-x>Mn_xTe層の保磁力の制御を試みた結果、すべて半導体からなるGe_<1-x>Mn_xTe/GeTe/Ge_<1-x>Mn_xTe/MnTeスピンバルブ積層膜において、2段のヒステリシスループを観測した。 (3)キュリー温度近傍における磁気相転移について詳細な検討を行った結果、臨界指数が平均場近似よりもハイゼンベルグ型に近いことを明らかにした。その短距離秩序の起源としては、抵抗の温度依存性等の実験結果から、磁気ポーラロンにより生じていると推測された。
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