IV-VI族GeTeベース希薄磁性半導体およびその積層構造において、(1)新規希薄磁性半導体の合成、(2)アモルファスから結晶への相転移を利用した強磁性微細構造の作製、(3)磁気特性制御および伝導特性の検討、について研究を行い以下の成果を得た。 1.GeTeベース新規希薄磁性半導体の合成 ほぼ同組成(x〜0.15)の種々の3d遷移金属をドープした薄膜を作製し、磁気特性を調べた結果、Mnに加え、CrおよびFeドープ薄膜において強磁性が得られた。このとき他の強磁性膜に比べ、キャリア濃度の低い、Feドープ膜において最も高いキュリー温度100Kが得られた。 2.相転移による強磁性微細構造の作製 光学顕微鏡に組み込まれた半導体レーザによりa-Ge_<0.7>Mn_<0.3>Te薄膜中への結晶細線の作製を試み、スポット径(1.2μm^2)と同程度の1.0μm幅の結晶細線が得られた。磁化曲線および磁気抵抗曲線から、結晶領域は強磁性となっており、相転移により強磁性結晶構造を作製できることを明らかにした。 3.磁気特性制御および伝導特性の検討 Ge_<1-x>Mn_xTe上へMnTeを成長させることで強磁性半導体層の保磁力の制御を試みた結果、Ge_<0.7>Mn_<0.3>Te/GeTe/Ge_<0.7>Mn_<0.3>Te/MnTe積層膜において選択的磁化反転を示す2段のヒステリシスループを観測した。積層膜における磁気抵抗効果比(電流:膜面内)は、単層膜(0.37%)と比べ、4.9%と1桁大きな値であった。また、同Mn組成でキャリア濃度が10^<19>〜10^<21>cm^<-3>と大きく変化した試料において、キャリア濃度の増加に伴い自発磁化の大きさが増加し、保磁力が低減することを明らかにし、キャリア制御による選択的磁化反転への可能性が得られた。磁気輸送特性から磁気転移について検討を行った結果、臨界指数は平均場近似よりもハイゼンベルグ型に近いことを明かにした。
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