次世代の高保磁力永久磁石、超高密度磁気記録技術の新分野の発展には磁性体に特有の、磁区の観察が非常に重要である。特に永久磁石中の単磁区粒子の磁壁移動および磁気記録媒体中の磁区を高い磁場感度と空間分解能で定量的に評価することが必須である。本研究では世界に先駆けて0.8μmの高分解能をもち、かつ磁界分布を室温で観察できる走査型高感度マイクロ・ホール・プローブ顕微鏡(RT-SHPM)を開発した。本装置を用いて永久磁石の表面磁界の分布を、強い外部磁界中で、かつリアルタイムで測定を行ない、磁石中の磁区の運動特性を明らかにした。 実験では始めに小型の強いパルス磁界発生装置(MCPS)の作製および立ち上げを行った。中心となる技術は3軸コントローラの設置とパルスコイルの巻き方であり、試料およびホール・プローブヘッドに悪影響させないように設計された。パルス磁場の半値幅および最大強さはそれぞれ3.5msと3テスラが得られた。瞬時に発生する巨大な磁気エネルギーのためコイル線同士の反発及び熱発生について充分考慮することによって優れた装置を作製することはできた。次にRT-SHPM-MCPS装置を用いてSrフェライト、NdFeB、SmCo永久磁石材料の磁区の観察を行った。ホール・プローブの接近にSTMを使うために、RT-SHPMの試料に数nm厚さのAu薄膜を蒸着した。その結果、今まで古典的な試料振動型磁力計では見られなかった材料中の磁壁移動、磁区反転、および磁区の大きさの直接観察に成功した。本研究で開発した技術および結果は21世紀の新磁性材料の開発に重要な役割を果すと期待されている。
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