1.微小発光点自身の電気的特性の測定: n形Si単結晶基板上に、従来と同様に電子ビーム蒸着法によってZnS : Mn薄膜とITO薄膜を成膜してITO/ZnS/n-Siヘテロ接合素子を作製し、更にフォーミング処理をして発光特性を導出した。この状態での素子の発光は微細な発光点が集合している状態であることがこれまでの我々の研究で判っている。この方法で個々の発光点の電気的特性を測定すべく、ITO電極の微細化を図って種々測定を試みた結果以下のことが判明した。すなわち、従来約10ミクロン程度と観察されていた数少ない大きな発光点も微細観測の結果、これがさらに微小な発光点の集合であり、その発光点の大きさは光学顕微鏡では測定できない程微小なものであった。したがって個々の発光点の特性測定には未だ成功していない。ITO電極を付けて測定するという手法では不適当のようであり、AFM等の原子レベルの顕微鏡を応用した測定を次に検討したい。 2.下地Si基板との相関性: n形Siの電気抵抗率を0.61〜26[Ωcm]の範囲で変化させた場合について研究した。いずれの場合についてもフォーミング処理特性を示し、処理後は発光を示した。この範囲の電気抵抗率では特別な相関性はみられなかった。 3.ZnS膜厚との相関性: ZnS膜厚を約50〜1500[nm]の範囲で変化させた場合について研究した。膜厚が約200[nm]以下では電気的特性に関して顕著な膜厚依存性はみられなかったが、これ以上では膜厚が厚くなる程フォーミング開始電圧が高くなることが判った。また発光輝度はそれほど変わらないことから、ZnSのITO電極側の領域は単に電流のパスとして存在していると考えられ、発光はSiとの境界領域で行われていると判断できた。
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