本年度は以下の項目について研究した。 1.下地Siウエハ表面のレーザ光照射処理の効果の検証: n形あるいはp形Si単結晶基板に赤外Nd:YAGレーザを照射して故意にSi表面を荒らして欠陥を生成させ、その後電子ビーム蒸着法によってZnS:Mn薄膜とITO薄膜を成膜して標記素子を作製した場合の素子の電気的特性と発光特性について研究した。その結果以下が判明した。 (1)n形Siの場合、発光効率の改善がみられること。 (2)p形Siの場合、従来は発光を示さなかったが、レーザ照射によって新たに発光を示すようになったこと。 (3)いずれの場合においてもレーザ照射によってその素子特性がかなり変化し有望な手法と考えられるが、現段階では表面にクラックが発生する等の問題点が同時に発生してしまうこと。 (4)レーザ照射条件や熱処理条件等について種々検討したが、クラックは発生せずに素子特性のみが向上するような条件は未だ見出されていない。 2.ITO/ZnS:Mn/ZnO/p-Si素子の研究 これまで研究して来たITO/ZnS:Mn/p-Si構造の素子においてZnS:Mnとp-Siの間に電子ビーム蒸着法によってZnO層を挿入した場合について研究した。適当な膜厚のZnO層を挿入する場合について研究した。適当な膜厚のZnO層を挿入することによって逆方向電流密度を2桁増加させることができたが発光させるには至らなかった。 3.ZnOウィスカの直流EL素子への応用 CVD法によって配向した微細なZnOウィスカの上にZnS:Mn層を形成した構造の素子の直流EL特性について検討した。一様な面発光を示すという有望な特性が得られた。ZnOウィスカの応用の一つとして、今後の発展に期待できると考えている。今後も研究を継続していく予定である。
|