研究課題/領域番号 |
13650357
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
星 陽一 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20108228)
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研究分担者 |
清水 英彦 新潟大学, 工学部, 助教授 (00313502)
鈴木 英佐 東京工芸大学, 工学部, 助教授 (60113007)
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キーワード | スパッタ / 軟磁性薄膜 / 低電圧スパッタ / 高飽和磁化 / パルススパッタ / 低温成膜 / 純鉄膜 / Fe-Co合金 |
研究概要 |
本研究では、高飽和磁化軟磁性薄膜材料の開発を目的として通常のスパッタ法に比べて極めて低い電圧でスパッタする低電圧スパッタ法、液体窒素温度での膜堆積法、パルス電源により発生させたプラズマを用いたスパッタ法等を組み合わせた、新しいスパッタ膜堆積法を開発するとともに、これを用いて優れた軟磁気特性を持つ膜を実現することを試みている。 平成14年度は(1)上記研究に用いるための低電圧スパッタ装置の特性改善、(2)異常放電の無い安定なスパッタ法として注目を集めているパルススパッタ法の検討、(3)対向ターゲット式スパッタ法を用いた下地層による軟磁気特性の改善効果の検討、(4)上記低電圧スパッタ法による特性改善効果の検討を行った。 その結果、(1)については、スパッタ陰極付近の磁界分布を改善することで、直径10cmの純鉄ターゲットを装着した状態でも54.24MHzの高周波電源からの電力供給時に、100V以下の低電圧でも1A以上の高イオン電流でのスパッタ動作が可能となり、従来の装置に比べて5倍以上の高堆積速度での薄膜の作製を可能とした。この結果は、rf-dc結合形低電圧スパッタ装置の低電圧動作特性が、スパッタ陰極の磁界強度と分布を工夫することで著しく改善できることを明らかにしたもので、高性能低電圧スパッタ装置の実現に有効である。 (2)のパルススパッタ法については、パルス電圧印加時および切断時のプラズマ状態を詳細に検討し、パルススパッタ法が、パルス幅、パルス電圧を調節することによって、特に酸化物などの薄膜作成に有効であることを確認した。 (3)では、パーマロイ下地層上にFe-Co合金膜を作製することによる何磁気特性の改善効果を確認したものの、十分な軟磁性膜を実現するところまでは至っておらず、それらの原因について調べるとともに、アルミナ添加などの方法による軟磁気特性の改善についても検討を進めている。 (4)では、スパッタ電圧を下げることによって、結晶粒の配向性が著しく改善できること、液体窒素温度製膜と低電圧スパッタ法を組み合わせることで、純鉄薄膜の軟磁気特性が改善できることが分かった。低電圧スパッタの効果として期待される、応力の小さな薄膜の作製については、現在検討中である。 今後は、継続して本研究で試みている上記新しいスパッタ堆積法を用いた場合の薄膜成長過程の特徴を明らかにするとともに、低保磁力の軟磁性薄膜を実現のための条件を探索していく。
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