本研究では、まずMelt-Casting法(MCP)で作製したBi2212バルク超電導体にSrSO_4やLi_2CO_3を添加して、その輸送特性を改善した。次に、臨界電流を測定し、その電流分布が交流通電損失に及ぼす影響を明らかにした。電流リードの開発に向けて本研究によって得られた成果は以下の通りである。 1.SrSO_4を10wt%添加した直径1cmの円柱状MCP試料によって、50Aを超える臨界電流を実現した。また、800℃でアニールしたMCP試料Bi_2Sr_2CaCu_2Li_<0.2>O_yは91Kで零抵抗を示した。 2.MCP試料は表面密度(比重)が高く、中心部に比べ約半分の抵抗率を示していることがわかった。 3.超電導電流は試料表面に集中して流れていた。また、MCP試料のn値は7〜8であることがわかった。 4.交流通電損失は周波数に無関係なヒステリシス損が支配的であった。断面が7.5×7.5mm^2の正方形MCP試料の交流損失は、超電導電流が一様に流れていると仮定したノリスの理論値よりもかなり小さかった。したがって、損失値の計算には、臨界電流密度分布と試料断面形状を考慮しなければならないことがわかった。これらの事実から、表面に集中している臨界電流密度分布が磁束侵入領域を限定させ、試料全体の交流通電損失を抑えていることを明らかにした。 5.交流通電損失と熱伝導による熱流入量を検討し、Melt-Casting法で作製したBi2212バルク超電導体が超電導電力機器の電流リードとして有効に使用できることを明らかにした。
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