研究概要 |
高周波反応性スパッタ法で作製したFe_2O_3-Bi_2O_3-PbTiO_3鉄基強磁性酸化物薄膜において,磁界による誘電率の変化を熱処理温度や測定周波数を変えて測定した.その結果,誘電率変化の大きさやヒステリシスの形状は,熱処理後の磁化特性を強く反映して大きく変化した.一方,相対誘電率変化Δε_r'(H)/ε_r'は周波数依存性を有し,最大で1%に達した.また,1MHzを超える周波数では誘電損失の磁界による変化Δε_r"(H)が顕著に観察されたが,これは対向電極にSi基板を用いたことによる薄膜コンデンサの寄生容量等の影響で,Δε_r'(H)成分に位相遅れが生じた結果と考えられる.従って電極材料を吟味することによって,より理想的な平板コンデンサを形成して,より高周波域の誘電率変化の測定ができるよう今後は素子の改良が必要である. 本研究では磁界による誘電率変化を容量変化として検出している.しかし容量は磁気ひずみ等によって生じる幾何学的な形状変化によっても生じる.今回用いた試料は弾性的に固い厚いSi基板を用いているので直接磁気ひずみを測定することは困難であるが,10^<-2>〜10^<-3>の容量変化を磁気ひずみで説明するのは無理があると思われる. 更に,誘電率変化の磁界依存性Δε_r'(H)が,磁化の磁化回転による現象的モデルできわめてよい一致で再現できることが分かった.しかし、このような現象がなぜ生じるかは現段階では不明であり、ミクロな観点から現象発現機構の解明にも取り組んでいる.
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