研究概要 |
本研究の目的は,我々が提案し画像再構成原理の実験的検証に成功しているスリット型プローブを用いた近接場顕微鏡システムに関して,本システムより得られる信号及び画像の定量的評価,そして,検査対象(物体)の屈折率(誘電率)分布,電界方向に対する物体応答の異方性分布(複屈折特性)といった物理パラメーターの画像化をミリ波,サブミリ波帯で実施することである。本年度は主に,異方性分布画像化のための画像再構成法の理論的検討及び本手法の有効性の実験的検証を実施した。具体的な研究事項及び結果,得られた成果を以下に示す。 スリット型プローブより得られる信号と画像化すべき異方性分布との関係を,二次元の屈折率楕円体の理論を組み込んだ投影行列を用いて定式化し,逐次近似法の一種であるブロック勾配法により画像再構成を行なう計算機シミュレーションを実施した。本シミュレーションにおいては,画像化領域における各画素の応答を回転楕円と仮定し,各画素からの応答の最大値,すなわち楕円の長軸,応答の最小値である楕円の短軸,そして最大値を与える方向の座標軸に対する傾きを用いて物体異方性をモデル化した。その結果,本画像再構成法により得られる画像が,10回の反復演算により異方性分布を仮定した現画像にほぼ収束,一致することを確認した。 以上の理論的検討を終了した後,60GHz(波長5mm)のミリ波を用いて,等方的な応答を示す金属,極めて大きな異方性を示すワイヤーグリッド,そして異方性誘電体結晶として代表的なリチウムニオブ酸(LiNbO_3)結晶を対象として計測を実施し,上記画像再構成法による画像取得を試みた。その結果,これら物体の異方性を明確に反映した再構成画像を得ることに成功し,本手法の有効性の実験的検証に成功した。また,得られた画像を詳細に検討することにより,観測波長の1/10以下の分解能が達成されていることを明らかにした。
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