本研究は、電子線リソグラフィでレジスト膜に形成した多段階の凹凸パターンを、反応性イオンエッチングによりシリコン基板またはガラス基板に凹凸を増幅して転写し、基板表面に三次元微細構造を形成する技術の開発を目的としている。本年度、以下の三点について検討をした。 (1)ラスタ走査方式による電子線描画において、レジスト膜に電子線ドーズ量の二次元的分布を与えるには、多重描画を行なう必要がある。この際の図形の重ね合わせ精度をどれだけ取れるかを調べた。本研究で使用した描画装置では、0.3μm以内の精度で図形の多重重ね合わせが可能との結果を得た。 (2)レジスト膜に所期の多段階の凹凸構造を形成するには、基板からの電子線の後方散乱による近接効果やレジストの感度特性を考慮して設計を行なう必要がある。このための電子線露光シミュレーションを行ない、実測のレジスト残膜厚-感度特性と比較した。描画図形のサイズに依存するこの感度特性は、シミュレーション結果からよく説明でき、レジスト膜への三次元形状形成の設計指針を得た。 (3)反応性イオンエッチングによる基板への三次元形状の転写において、レジストマスクの多段階凹凸パターンを凹凸を増幅して転写するには、マスクと基板とのエッチング選択比やエッチング異方性をコントロールする必要がある。CF_4、SF_6エッチングガスについて、これらの基本的エッチング特性の評価を行なった。エッチング選択比は0.5から80程度までとれるが、異方性についてはマスク下に30〜40%のアンダーカットを生じるとの結果を得た。
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